正社員が派遣社員に仕事を質問してくる不思議な職場

私は20代半ばから派遣社員として約8年間働いていました。同じ派遣会社から、継続的にお仕事を紹介していただき、1ヶ月程度の短期の仕事から、約2年の長期の仕事まで、様々な企業でお仕事させていただきました。

私が派遣社員を選んだ理由は、パソコンスキルが武器になる働き方だったからです。学歴が高いわけでもなく、魅力的な職歴があるわけでもない私は、学生時代から志した仕事に就いたまでは良かったのですが、そこで挫折し、応用の効かない職種だったため、パソコン教室でスキルを身につけ、派遣社員の道を選びました。様々な企業での就業経験がありますが、良くも悪くも、一番印象深い企業は、長期で働いたメーカーでした。誰もが知る大手メーカーです。

主な業務内容は、企画部のアシスタント。具体的には、企画部内の庶務、伝票管理、資料作成、議事録作成、雑務、商品チラシ管理、JANコード管理などです。主な仕事はパソコンスキルを使うものでしたが、お茶出し、コピー、電話対応、来客対応、時には買い出しまで何でもやりました。

私以外にも、多くの派遣社員が働いていました。会社の平均年齢は比較的若く、20代の人も多く、楽しい職場でした。

だけど、ちょっと癖のある職場でもありました。癖と言うか、キャラクターの濃い人が多かったのです。そして、論理的と言うよりも、精神論重視の社風でもありました。例えば、正社員だと、新人研修では、チームワークを結束させるために、班ごとに分かれて、難しいアスレチックに挑戦したりするそうです。そんなものはいいから、正しい電話対応の方法を教えたらいいのに、と心の中で呟いた腹黒い私です。

企画部は、商品開発を行っていました。アイディアが重要な部署だというのはわかるのですが、非常にルーズな正社員が多く、それにはかなり参りました。

まず、提出物が期限内に守られないのです。伝票管理をしていた私は、経理の締日までに、計上しなければならない伝票を処理しなければなりません。だけど、これがなかなか集まらない。毎月毎月、「まだ間に合う?」と、締日の次の日に伝票を持って来たり、「やっぱり広告宣伝費にして」と分野の変更をお願いしにきたりする人が後を絶たないのです。

その度に、私は経理部に連絡を入れて、頭を下げながら処理してもらわなければなりません。こういったルーズな正社員は企画部だけではないようで、経理の方は、大抵「いつものことよね」と寛大に応じてくださるので、それはすごく助かりました。おかげさまで、全く別部署の経理部の方と随分と親しくなりました。

ルーズなのは、提出物だけではありません。様々な商品を企画開発し、それを売り出しているメーカーなのですが、商品開発をしている企画部の正社員の方が、自分の商品の情報を間違って覚えていたりするから恐ろしいです。私は商品チラシや、値段などを管理するJANコードの最終的な砦のような仕事をしていたのですが、誤字脱字、時には値段や、種類数が間違っているので、入念にチェックする必要がありました。

もちろん、会社の備品や、商品サンプルの扱いもルーズでした。私は事務用品、商品サンプル、資料などの管理もしていたので、ルーズな正社員よりも、在庫や場所などに詳しくなってしまいました。

「わからないことは、とりあえず、あの派遣社員さんに聞いてみよう」

そんな感じになってしまいました。

それは、企画部だけの事ではありませんでした。よく派遣仲間と「どうして正社員から私たちが質問されなければならないんだろう」と愚痴りあったものです。変なプライドがあるのでしょうか。わからないことは、その部署に聞いた方が絶対早いのに、彼らはそれをせず、いつまでも悩み続けていたりするのです。そして、最終的にあてにされるのが、私たち派遣社員でした。

そんなルーズな正社員だらけの会社でしたが、辛いことばかりではありませんでした。ルーズとは、プラスに言い換えれば、寛容という意味です。もちろん、正社員と派遣社員という区分けはされていましたが、派遣社員でも、日帰り社員旅行や、忘年会など、会社のイベントに参加することができました。そして、皆さん、とても朗らかで、優しい人ばかりでした。

だけど、やっぱり仕事にルーズな人が多い職場と言うのは、非常にストレスが溜まるものです。長期の仕事でしたが、私の我慢の限界は2年できてしまいました。企業からは契約続行を希望されていましたが、色々と理由を付けて、3ヶ月ごとの契約更新のタイミングで、別の派遣先に移ることにしたのです。

短期長期、たくさんの企業で仕事をしましたが、ここまでルーズな正社員ばかりの職場は、後にも先にも、この会社だけでした。